「新型コロナウイルス感染症による看護学校など教育現場への影響」調査結果:埼玉県内看護教育施設の看護管理者(准看護師学校)対象

埼玉県内の准看護師学校教務主任の皆さまに、新型コロナウイルス感染症の影響をアンケート形式でお聞きしました。お忙しい中、多くの皆さまにご協力を賜り、感謝申し上げます。
この度、集計結果がまとまりましたのでご報告いたします。記入していただいた内容は、生の声としてなるべくそのまま掲載いたしました。
埼玉県看護連盟ではこの集計結果を、看護職国会議員や埼玉県選出の国会議員・県議会議員や市町村議会議員に届け、今後の制度政策に活かしてほしいと考えております。

調査対象:埼玉県内看護教育施設の看護管理者(准看護師学校)

目的 新型コロナウイルス感染症が看護学校など教育機関にどのような影響を及ぼしているかを把握し、国・県・市町村議会議員に届ける
調査期間 2020年9月9日~9月20日
回収率 88.23% (15/17校)

1.まずあなたが所属している組織のことをお聞きします

2.新型コロナウイルス感染症が学校運営に及ぼした影響についてお聞きします

1)授業についてお聞きします

1~3月
(3/11 パンデミック表明)
4~5月
(4/7 緊急事態宣言発令、5/25 解除)
全面的に中止 0 全面的に中止 6
部分的に中止 10 部分的に中止 6
・卒業式のみ学生登校 ・入学式、その他登校日を設けた
・式典縮小 ・休校した(5月のみ分散登校)
その他 5 ・遠隔授業
・3/2~自宅学習 ・4/13~5/6 休校
・感染予防対策をして実施 ・4月休校、5月遠隔授業、週1回登校日
・通常授業、オンライン授業 その他 3
  ・自宅学習
  ・2年生オンライン授業、1年生課題郵送
6~8月
(6/2 東京アラート発令)
今後の予定
全面的に中止 0 全面的に中止 0
部分的に中止 2 部分的に中止 1
・1教室15名以下として行動授業 その他 11
その他 11 ・通常通り実施予定
・通常通り ・通常(密に配慮し、大部屋使用)
・通常(密に配慮し、大部屋使用) ・状況を確認し、教育内容変更予定
・夏期休業を短縮 ・講師によりオンライン授業
・課題等で実施 ・オンライン授業を含めて検討中
・各学年交互登校 ・修学旅行の延期、音楽授業は打楽器使用
・教室外で授業 ・式典は中止、または規模縮小で実施

2)実習についてお聞きします

1~3月
(3/11 パンデミック表明)
4~5月
(4/7 緊急事態宣言発令、5/25 解除)
全面的に中止 1 全面的に中止 7
部分的に中止 5 部分的に中止 6
・3/2~3/31 全面的に中止、それ以前は通常授業 ・自宅学習
その他 6 ・すべて学内実習
・通常通り ・5月実習は6月授業再開から学内でスタートする等、内容や時期を調整
・感染予防対策をして実施 ・精神科実習以外終了
・学内実習 2 その他 2
・実習はなし ・一部学内実習の他中止
・実習2週間のうち1週は学内に変更  
6~8月
(6/2 東京アラート発令)
今後の予定
全面的に中止 2 全面的に中止 1
部分的に中止 7 部分的に中止 5
・学内実習 3 ・2か所受け入れ不可能
・基礎実習短縮 ・学内実習
・母性中止 ・受け入れ施設2か所(少人数・短時間)のみ、他は学内対応
その他 5 その他 6
・許可のあった施設のみ臨地へ、他は学内学習 ・学内実習、分散登校
・6月中旬~各論実習、通常通り ・状況により見直し
  ・出来る施設は臨地へ、他は学内実習
  ・断られない限り通常実習
  ・来年1月、3月に1年生の基礎実習予定
  ・状況を見て学内実習に切り替える予定

3)授業・実習について学校として工夫したことは何ですか

【授業】
・机を離す、講師と学生間の距離を取りシールドを設置。8/2~各机に衝立設置
・分散登校、1学年を2グループに分け同じ授業を2回行った
・デジタル教材を活用し、課題学習、密を避ける教室の準備
・講義時、教員の机に飛沫防止スクリーン設置、可能な限り大きい教室使用
・密を避けるため教室の人数を半分にして、教室間をビデオカメラでつないで授業
・講義を無観客でDVDに収録し、課題と共に郵送(PCを持っていない生徒もいたため)、後日課題回収、評価。収録できなかったケースは課題を出し、学校再開後テストを実施。質問・疑問は電話やメールで対応し、早期解決に努めた
・学習を留めないように教育計画を変更しながら実施、課題授業は登校開始後再度授業展開で捕捉
・視覚教材の利用
・通常より広い教室を使用、式典は中止または規模縮小。進路説明会(施設代表が来校)はリモート希望が多かったため調整
・教室を講堂に移し、窓を10㎝開け対応
・オンライン(遠隔)、課題授業、DVD契約し視聴授業。教員4・5月在宅勤務
・VTR撮影後DVD(USB)にして郵送、課題作成
・講堂と科学室を利用して密を避けた
・感染防止対策指導の徹底、体調管理。教師への協力依頼。ビデオ配信による学習。反転学習の取り入れ
・休み中の課題を動画聴取に取り入れた授業内容にした
【実習】
・学内にて演習、ビデオ学習
・密を避けるため時間差で行い、フェイスシールドを活用
・期間の短縮、グループを半数にして密を避け交互に僻地と学内実習
・毎日2回体温測定、熱がなくても体調不良時は欠席を勧める
・マスク・アルコール・フェイスシールド等を配布、抗体検査を全員に実施
・休業中はペーパーペイシェント、教員の演じた看護場面のDVDを用いて情報収集や看護計画などを展開
・人との関りを大切にするために、模擬患者の設定で奨励展開を行った(教員・ボランティア・卒業生などの協力)
・5月実習は6月授業再開から学内でスタートする等、内容や時期を調整。またフロアーにいる時間を短縮し、学生がいることで密にならないよう施設側と実習方法を調整
・実習人数を半分にし、残りの半分は他の病院に依頼
・病棟へは少人数・短時間を条件に臨地実習を行った
・学内対応、模擬患者(教員)設定、午前・午後に分けて登校(自宅学習、Zoom対話)
・学内実習に病院紹介データを借りて活用
・すべて学内実習にした
・学内で密にならない実習体制、臨地では感染源にならないよう就業の自粛、抗原検査の実施
・事例展開をし、分散登校で確保、グループワーク、シミュレーションでの演習

4)学校として物品の不足など、困難なことを教えてください

・シミュレーションモデル人形がない 3
・人数分の物品が足りず新たに購入(血圧計、体温計)
・感染防止のためのウオッシュクロスなど学生分購入
・リモート環境の不備
・PCを持っていない学生もおり、遠隔授業に困難を感じた
・感染防止対策用品が入手困難であった
・学校や実習先でも必要なものが増え費用がかかる
・オンライン授業で使用するPC、シミュレーター模型が古かった
・物資が不足していた時期、実習の条件だったマスク、ゴーグル、フェイスシールド、手袋、エプロン、アルコール類、スプレー用ポシェット等を準備するのがかなり大変だった。さらにコストもかかった
・一時期マスクが不足
・臨地実習代替で使用したかったDVDや模擬スーツ
・マスク、アルコール消毒のストックが少なかったため、確保(購入)が困難だった
・学校が狭く全学生が学内にいることが困難
・密ならないための教室の不足
・お金が無いので物品購入も悩む
・教員を増やせない中、2年生に教員がとられると1年生に手が回らない
・オンライン授業にしたいがPCが全員そろわない
・学生のネット環境を整えることが困難
・1学校内に2科あるため、ベッドや清潔援助の物品が不足

5)授業や実習が従来通りできないことの影響

学生について


【学習面】
・夏休み短縮にて補習授業
・不安、実習場所に行けないことによる臨地での対応力や観察力が見つけにくい
・リモート環境が整っていないためリアリティーに欠ける
・教室をビデオカメラでつないだ時の画面状況が悪い
・自己学習だけではモチベーションも保てず学力の低下が見られる。臨地での実習時間が少ないことで学べる内容が減っている。
・カンファレンスが実習時間(臨地での)短縮により毎日出来なかったためか、単なる学生の問題か、例年より患者理解の力や自主的に行動する力がやや不足しているように感じる
・学内実習が増え患者から学ぶ機会が減り、臨地実習の重要性が改めて分かった
・患者への実際に行う技術の未熟さが心配、緊張感の欠如が見られる
・患者さんに実際に触れることが出来ない、コミュニケーションのみでなく肌で感じるものがない。また、臨地での緊張感もない、喜びも看護の楽しさも分からない
・教室でない場所での授業のため気持ちが落ち着かない、スクリーンが見えない場所があり不公平感を感じている
・実習で看護ケアの実践ができないことで学習意欲の低下。学内でPCR検査をした学生への対応(学習面、精神面)
【精神面】
・4月からの授業が出来ないことによる不安
・学習について行けるか不安だとの訴えが多くあった
・生活習慣の乱れで疲労を訴える学生が多かった
・新入生は特に、どのように学習して良いか分からず意欲をなくす人や、不安感を訴える人がいた
・学力の定着に個人差が見られてきた。体調を崩す生徒もいる(精神面・身体面で)
・学生達のモチベーション低下、不登校あり
・対面授業でないため、紙面の質問・返答によりすぐに試験を行ったため不安が強かった
【経済面】
・遠方から通学している学生に負担増
学校運営について



【経済面】
・通信費の増大
・電子黒板など購入による出費
・経済困難となった学生が退学
・授業料の支払いが滞っている生徒がいる(分割納入)
・感染防止対策のため(消毒、シールドリモート環境等設備)の予定外の出費
・想定外の物品の購入や通信費の発生で費用がかさむ、光熱費も心配
・教室を大きく使えるようにしたり他を教室として使えるよう設備を増やしたり整えることによる出費
・シミュレーション教材(モデル人形等)の購入に伴う経営の圧迫
・とにかくコストがかかる
・教室以外の空き教室を全部利用して実習に取り組んでいるため、電気、コピー等の運営費用が例年より増大
【カリキュラム】
・学習方法の再構築
・行事の中止(研修旅行、戴帽式、事例発表会)
・新年度評価が全く進まない
・新カリキュラムの準備が遅延
・カリキュラム変更により多方面に迷惑をかけた
・先の見通しを立てることの困難さを感じている
・年間行事や授業計画変更で目先の事しか学生、施設に伝えられない(勤務が組めない)
【その他】
1年と2年が学内にいるため、実習室が取り合いになることもあった
・1、2年の交流がまったく取れていない。また課外授業が出来ず、教育内容の変更が生じている
・実習施設に受け入れをしてもらえず、臨地での学びが出来ない分野がある。施設との関係性にも変化が生まれた
・Wi-Fi環境が整わなかった
・スペース確保が難しい、室温管理も難しい、扇風機7台を購入し対応
・全職員が授業をしながら実習対応もするため、業務量が増え疲れている
・教材不足で急な購入による予算捻出や休校中の学習サポート環境を整えていくための対策に追いついていかない

3.新型コロナウイルス感染症が学生に及ぼした影響を教えてください

【学習面】
・臨地実習に行けないかったことで、患者への関り等習得しづらい
・平熱が37℃以上の学生が実習施設から受け入れてもらえなかった
・従来通りに学べず臨地での体験が出来ない
・4月中の授業は資料配布で対応した。その後、モニターで行ったが対面授業の方が理解力・状況・状態など把握できると思った
・出席停止による授業の遅れ
【精神面】
・ストレス増
・不安、子どもを預けるところが休みになったことによる学校欠席
・学校・職場・移動時の感染リスク
・1年生は学生間の関係性構築に時間がかかった
・病院で助手として勤務している学生は感染が怖くて働けなくなった。それと共に経済的に困難となった。過呼吸を起こす学生が増えた。
・先行きが不透明なことによる精神的不安
・感染予防の観点から細かな内容まで指導しなければならず、学生が困惑することもある。学生が体調不良の相談をしてきても、PCR検査が簡単に受けられず、コロナ感染が否定できず、あちこちのクリニックに行かせ、登校できない日数が増えてしまったケースがあった。学生の置かれた複雑な環境も影響して、学生に不信感を持たせてしまった
・自宅で過ごす時間が多いため、昼夜逆転で登校が始まると倦怠感を訴える学生が増えた
・元々不登校気味の学生が通学できなくなる
・これで卒業しても…と不安の訴えが多い
・2年生は臨地実習がないまま卒業を迎えるため不安を抱えている。臨地の様子を伝えるようにしている
・身体面・精神面でのストレス(特に臨地実習が出来ないことに対して不安)
【経済面】
・マスク・消毒・リモートなど予想外の出費
・経済的な面で学費納入ができず退学
・「濃厚接触者の疑い」と保護者から連絡が入り、自宅待機となったことが一度あり、そのときはすべての実習施設と調整し、実習停止になった学生が多く出た。停止になった実習を夏休みにあてるなど、就業している学生はその対応もあったと思う
【その他】
・行事の少なさからクラスの団結力の欠如
・感染予防の意識が非常に高まった
・実習の学びが出来ない(学内実習で工夫し、精一杯しているつもりだが)ことは非常にマイナスであるが社会動向に関心を持ち、社会性が少しはぐくまれたように感じる

4.新型コロナウイルス感染症は、どのような影響を与えましたか

その他 1 待遇の悪化 1
・残業がなくなった ・夏の賞与減

5.新型コロナウイルス感染症の影響で退学した学生はいましたか?

いる 3人
・経済的理由
・不安感や淋しさから学習意欲をなくしてしまった
・母子家庭の学生は子供の預け先(保育園の休園)がなくなった。働けず経済的にも困難

6.2019年度卒業生から悩みや相談を受けましたか

はい 4
・親の仕事がコロナの影響で減り学費が払えるか厳しい
・病院で働くことの不安
・コロナウイルス感染症の病棟に勤務しているための不安
・進学先も実習に行けず夏期休暇も短縮となり金銭面や体力面で困難さを感じると言う相談が多かった
いいえ 8
・現場が混乱しているので新人教育がままならないことが予測される
その他 1
・働く病院の患者が減り楽になった

7.2020年度卒業生への求人状況をお聞きします

変化がある 3
・クリニックなどの採用は減っている
・非常に少ない
・面接が遅い、募集の早いところ、遅いところに差がある
その他 3
・就職活動中
・まだ分からない

8.2021年度入学生の応募状況をお聞きします

従来通り 6
・学校案内は従来通り出ているがそんなに多くはない
・応募者が減少しているように感じる
変化がある 3
・応募状況が悪い
・少なくなっている
その他 5
・まだ分からない  

9.国会議員や埼玉県議会議員、市町村議会議員などに、教育現場の声として伝えたいことをご記入ください

・准看護師学校の存続にも是非お力を注いでほしい
・PCR検査そのものを実施する機関を拡大、クリニック等で出来るようにしてほしい。早くワクチンまたはアビガン等が近医でできるようになるとベストである
・コロナ禍に卒業した生徒か現場でどのように働けるのか、成長に影響が出るのか心配だ
・学内での実習も模擬患者の設定などで対応しているが、一日学生がいるため教員が疲れてしまう。授業時間、実習時間に不足がないように指導していく中で教員の業務は2倍から3倍、もしかしたらそれ以上、心も体も疲れ学生対応にも支障が出かねない。急に教員補充は出来ないし財政的にも無理、県や国からの支援はなく情報も今後のビジョンもない現状である
・実習が予定通り進んでいない。学内でも対応できる看護の実習は患者と関わって、知識と技術が結びつく。学びの多いのが実習。病院の負担を考えると無理を言えないことは充分分かっているが臨地に行かない准看護師がこのまま臨床に出ることに不安を感じる。対人面に困難がある学生がこのまま卒業して良いのか?
【経済的支援】
・感染対策(リモート環境を整備するための教材、備品)を支援してほしい
・准看護師学校は経済的に困難を抱えている人や家族に障害を抱えている学生が多く学んでいる。オンライン授業を開始したが通信環境が整わない。PCを買えない学生も数名おり登校して学内でオンライン授業を受けた。学ぶ環境を整えるための支援(PCの貸し出しなど)をお願いしたい
・実習時に病院からの要請でPCR検査をする際の費用は無料にしてもらいたい。または実習施設はPCR検査を要求しないでほしい
・准看護師課程にも手厚い助成をお願いしたい(専修学校同等に)
・オンライン授業、シミュレーション等充実できる環境を整えるためには、教室数、予算が不足している為、問題が山積みである

以上